どうも。のりまき、です。
辛うじて生きています。。
…さて。
日本語教育に興味のある方なら、ご存知の方も多いと思いますが、去る5月26日の参院本会議において「日本語教育機関認定法」が可決、成立しました。
そして、さらにそこから遡ること9日前の5月17日の参議院本会議では、認定日本語教育機関に関する国会答弁も行われています。
ご覧になっていない方は、情報としては古めかもですが是非ご覧ください。冒頭から約1時間40分ほど後です。
国会での主な質疑がこちら↓
…で。この「日本語教育機関認定法」。施行は来年2024年の4月です。
いよいよというべきか、とうとうというべきか。現役日本語教師である私としては正直、複雑な心境です。
一応、確認しておきます。
日本語学校としては学校が認定されるかどうか、またそこで働く私たち現役の日本語教師にとっては教員資格が一体どうなってしまうのか、といったところが気になるところかと思います。
そこで今回は、日本語教師としての新資格、「登録日本語教員」について現時点で分かっていることを主観をたっぷり交えて、一旦整理しておこうと思います。
ただでさえ教師不足だというのに、、、、
採用担当の舌打ちが聞こえてきそうです。
登録日本語教員とは
現行資格とその問題点
登録日本語教員についてお伝えする前に、現行の資格について確認しておきます。
日本語教師として国内の日本語学校で働くための資格↓
- 大学・大学院で日本語教育主(副)専攻
- 大卒(非日本語教育)かつ日本語教師養成講座(420単位時間以上取得)に通う
- 日本語教育能力検定合格(民間資格)
現在は1~3のどれかに当てはまっていれば、教壇に立てます。最近でこそ大学で主(副)専攻という新卒社員も増えて来ましたが、全体で見れば2割。まだまだ割合としては2が多数派で約6割ちょっと。私もそうです。
この現行制度に対し、文化庁が指摘している問題点というのが以下3つ
・質の担保が不十分で一定しない。
・日本語教師の法的な位置づけが不明確で人材確保に課題。
・専門性の証明が難しい。
こうした問題点を文科省が主体となって「質」が担保されるような仕組みの教育機関(日本語教師)を作っていこうというわけです。
登録日本語教員になるには 全7ルートを解説
文化庁が公表している登録日本語教員になるためのルートをまとめてみました。
全部で7ルート。まずは文化庁が公表しているものがこちら↓
こちらの図を基に現役日本語教師から順にご紹介します。
また文化庁では現役教師の定義を次のようにしています。言わずもがな、要チェックです。
平成31年4月1日~令和11年3月31日の間に、日本語教員として大学や告示校等で1年以上勤務した者。
現役教員として認められる勤務年数は、平成31年(2019年)から令和11年(2029年)の10年間でたった1年です。たった1年勤務していれば現役教員と胸張れます。業界団体のご尽力のおかげもあるのでしょうか。
さらに見過ごせないのは、経過措置の期間です。
原則法施行後5年(令和11年3月31日)までとする。
これは5年という期間が長いのか短いのかということより、その5年間で確実に登録日本語教員としての資格を改めて取得をする必要性があるということの方が重要なのです。
特に現役の日本語教師にとって影響必至。
【現役日本語教師の場合】全4ルート
現役教師が登録日本語教員になるには次の3ルートです。
ルート1・図F(現行・日本語教育能力検定 有無関係なし)
現行資格保持 → 基礎試験 → 応用試験 → 登録日本語教員
ルート2・図E(現行・日本語教育能力検定 取得済)
現行資格保持 →講習受講 → 講習修了認定試験 → 登録日本語教員
ルート3・図D(現行・日本語教育能力検定 未取得)
現行資格保持 →講習受講 → 講習修了認定試験 → 応用試験 → 登録日本語教員
ルート4・図C
現行資格保持(新基準対応済かつ国の認定をまだ受けていない現行課程(420時間・大学等)修了)
→ 応用試験 → 登録日本語教員
【2024年以降・日本語教師を目指す場合】全3ルート
ルート5・図B
新基準対応済かつ国の認定も済んでいる登録日本語教員養成講座(実践研修機関を兼ねている機関)修了 → 応用試験 → 登録日本語教員
ルート6・図B’
新基準対応済かつ国の認定も済んでいる養成講座修了 → 応用試験 → 実践研修機関での研修受講 → 登録日本語教員
ルート7・図A
上記以外の者(養成講座なし)→ 基礎試験 → 応用試験 → 実践研修機関での研修受講 → 登録日本語教員
登録日本語教員になるまでの各ルートを主観コミコミで「補足」
ではここから、各ルートについて補足していきます。
ルート1~4(現役日本語教師→登録日本語教員)
ルート1・図Fは基本的にあまりいないと思っていいです。現職教師である時点で、養成講座修了もしくは検定合格が前提だからです。
ルート2・図Eは一番負担の少ないルートです。現行の教育能力検定を持っていることで、応用試験が免除されるからです。とはいえ、講習を受けてさらに修了認定試験なるものを受ける必要があります。
そして、(問題の)ルート3・図D。個人的にはここが一番、ヤバいのではないかと思っています。
なぜなら、現役の日本語教師における資格構成の多くが、大卒(非日本語教育)+養成講座修了で、検定を持っていないことが多いですからです。つまり、講習受講のみならず「応用試験」までも受けなければならないことがかなりのハードルになるのではないか、と。年齢的にも30代~60代のTHEベテラン教師です。
中には70代半ばといった方もいます。そうした方たちが、日本語を教えながら試験に向けた勉強をしなければならないのは、相当な負担だと考えられるからです。経過措置(以降期間)があるとはいえ、、です。
知識というより、モチベーションが。。。
私にはその経過措置が日本語教師の時限措置に思えてなりません。。。
あぁ。本格的な離職ラッシュが。。。
ルート4・図Cは新基準相当の課程を持つ養成講座等を出ている方です。ここ数年の間に日本語教師になった方や現在養成講座に通っている方たちが中心です。
ルート5~7(これから登録日本語教師を目指す方)
ルート5と6の違いは、実践研修を兼ねた機関かどうかです。
例えばルート5・図Bは、実践研修機関と養成講座(大学)をそれぞれに持っている機関、ルート6・図B’は、養成講座(大学)のみ。そのため、ルート6を選択した場合は、養成講座修了後改めて別の実践研修機関で研修を受ける必要があります。大学の専攻が非日本語教育または実践研修機関を持たない大学などの場合は、ルート5が普通でしょう。
そして、最後にルート7・図A。こちらは、とにかくコスパ重視!という方向け。
現行資格基準でいう「日本語教育能力検定所持」の1点をもって資格としている方に近いルートといえます。
たしかに資格としては満たしていることになり、コスパという点でも多ルートと比較して圧倒的に安上がりです。ですが、全て独学で進めなければならない点、実践研修があるとはいえ、実技面で不安がどうしても残ってしまいます。日本語学校での就職(留学生対象)を考えているなら、避けた方が良いでしょう。
ただし、それは建前。この業界的人材難の時代、「資格」さえあれば採ってくれる学校が確実にあります。そう、うちの学校ように
登録日本語教員の新試験・基礎試験&応用試験とは
登録日本語教員を目指すにあたって、やはりポイントとなるのが新試験の存在。
上記にご紹介した7ルート中、実に6ルートにおいて基礎試験か応用試験のどちらか、あるいはその両方の取得が必要となるのです。検定取っといてよかったぁぁ。。。
…さて。その新試験についてです。
2023年6月28日の第 119 回日本語教育小委員会において、登録日本語教員の新試験となる日本語教員試験(基礎試験・応用試験)の試行試験実施概要が発表されました。
果たしてどんな試験となるのでしょうか。その発表内容も以下に引用しておきます。
試験➀基礎試験
基礎試験に関して、試験概要にはこうあります。
「言語そのものや言語教育、世界や日本の社会と文化等、日本語教育を行うために必要 となる3領域5区分15下位区分及び50項目の必須の教育内容に含まれる基礎的な 知識及び技能を有するかどうかを測定する試験とする。」
令和5年度日本語教員試験試行試験実施概要(案)
H3 試験➁応用試験
続けて、試験②応用試験に関してはこうなっています。
出題範囲が複数の領域・区分にまたがる横断的な設問により、実際に日本語教育を行う際の現場対応や問題解決を行うことができる基礎的な知識及び技能を活用した問題 解決能力を測定する試験とする。」
令和5年度日本語教員試験試行試験実施概要(案)
ん?音声… ぎぇー。音声!舌の位置がどうとかいうやつ~!
と思われた方、落ち着いてください。
この音声、日本語教育能力検定でもお馴染みの「音韻・音声体系」とは異なるようです。
応用試験の一部は、日本語学習者の発話や教室での教師とのやりとりなどの音声を 用いて、より実際の教育実践に即した問題を出題し、問題解決能力や現場対応能力等 を測定する。
令和5年度日本語教員試験試行試験実施概要(案)
とあるように、音素のような音声記号をひたすら丸暗記!といったような問題ではないようです。もちろん基礎試験では問われることになりますが。
そんな試行試験について詳しくはこちら↓
新試験範囲である3領域5区分15下位区分及び50項目とは?
では、この資格取得ルートの表でも出て来た50項目の必須の教育内容とは、一体何なのか。確認しておきます。まずは下の表をご覧ください。
この3領域5区分15下位区分及び50項目とは、今から遡ること32年前の平成12年に文化庁においてまとめられた日本語教員養成に関する教育内容を時代に即した形で修正を加えたものになります。(平成31年3月日本語教育人材の養成・研修の在り方について)
そして、これが新試験における試験範囲であると同時に「登録日本語教員へのルート」でもお伝えした「新基準」ということになります。そのため、学校(養成講座・大学)選びの際は、この50項目の教育内容に対応しているかどうかが、非常に重要なのです。
大学ごとの新基準対応状況
養成課程を持つ大学が、この新基準(必須の教育内容)に対応しているかどうかは、文化庁の資料でみることができます。それがこちら↓
ここで対応済みとあれば、まず安心ですね。
登録日本語教員を整理する!まとめ
いかがでしょうか。登録日本語教員。今回は特に現役日本語教師の今後に焦点を当てて、お伝えして来ました。これから年末にかけ制度に関する詰めの作業が行われ、関係各所に周知されていくことになります。今回の記事のまとめはこうです。
…です。
私個人としての感想は、この国家資格化によって現役日本語教師(=学校)の大量離職時代(=淘汰)が加速していく可能性があるということです。
呪!国家資格とならない保証はないのです。
まぁ、とはいえ期待もないわけではない(N2文法)ですが。。。
皆さまはどうお考えでしょうか。
これまで日本語学校の審査認定にあたっては、法務省の告示基準による審査(もっと古くは民間団体だった)を受けるのみだったのですが、今後は文部科学省が審査認定を行うようになります。つまり「教育」の質において国が責任を持とうということです。
そして、この認定機関で働くにはその全てが「登録日本語教員」でなければならなくなります。この点については法務省の告示基準が、教育(質)というより在留管理の方に重きがおかれているので、理解できます。理解できるんですが、、、。
日本学校にとって大事なことは、認定がもらえないと実質的に留学生の受入ができなくなってしまうという点です。