こんにちは。
最近、オンライン授業が楽しくて仕方がない、のりまき、です。
大変なコロナ禍における数少ない光明の1つでしょうか。
さて我々日本語教師にとって最大のお客さまとも言うべき、中国人留学生。年々、増加傾向にはあるわけですが、ここ数年教えていて、ほんっとに変わって来たという印象です。今回は、教師経験ももうすぐ15年になろうかという私が、これまでに接して来た中国人留学生のリアルを10年前と現在を比較しながら、お伝えします。
もしかして、中国人と言えば未だに「自己主張が激しい」「マナーを守らない」「騒がしい」「隙間にはまりがち」なんて思っている人いませんか。
それ典型的な「ステレオタイプ」です。
中国人留学生数の推移
では、まず中国人留学生数の推移を見てみましょう。
留学生30万人計画のもと2008年には72,766人だったものが、10年後の2018年には114,950人と1.5倍超に増加。その間、外国人留学生の数も123,829人から298,980人へ2.4倍増となっています。外国人留学生における中国人の割合が、58%から38%へと下がってます。かつてはどれだけ中国人留学生で占められていたかが分かります。
私が日本語教師になった当初、クラスの留学生のうちほとんどは中国人学生でした。
【2021版】中国人留学生のリアル
それでは中国人留学生の特徴をご紹介していきます。
1、真面目で大人しく、そしてデリケートになった。
真面目で、大人しくなった。
ここ数年の変化でもっとも感じるのは、学生が「大人しく、デリケート」になって来ていることです。冒頭に述べた「騒がしい」なんていうのは、10年前の話。今は、とにかく静かです。昔の中国人をよく知る方などは、この点一番驚かれるのではないでしょうか。
たとえば、授業の合間の休み時間。かつてはホントににぎやかでした。クラス内でのおしゃべりはもちろん、他クラスの学生が遊びに来ては、授業が始まっても居座るみたいなこともありました。
授業ではもちろん指名すれば、答えますし、冗談を言えば笑いもします。でも続きません。教師ならば、誰もが持つ鉄板ネタも一瞬です。以前はあった笑いの余韻みたいなものがありません。
日本語学校の授業といえば、学生に問いかけ答えを引き出しながら進めていくのが一般的です。そうなんですが、クラス全体に質問しても答えが返って来ないということが時々あります。決して難しいことを聞いたわけでも、嫌われているわけでもないのにです。仕方ないので個別に指名すると、そこで初めて口を開くのです。しかも正しい答え、期待した答えをです。つまり、分かってはいるんです。
ただ答えないだけ…。
授業の合間の休み時間さえ「無音」です。以前は休み時間が終わっても、おしゃべりが止まず授業が始められないなんてこともありましたが、今ではほとんどなくなりました。
興味ないの?人に!?と思えてしまうこともあります。
一方で、問題を解いたり、作文を書かせたりするとせっせと取り組みます。初級、上級関係なく。中にはゲームをしたりする学生もいますが、その数は10年前の比ではありません。たとえば、クラス全員中国人で、それが20名いたとすれば、その中の1人か2人です。割合にして5%~10%程度。そんな程度です。
10年前の初級~中級レベルの学生なら、ゲーム、居眠り、おしゃべりしょっちゅう。中にはコンビニで買って来たおでんをパクついたり、パックの焼き魚をつつく強者もいました。ゲームも現在のようなスマホではなく、ニンテンドーDSやPSPなどのポータブルゲーム機です。だから余計に目立ったのかもしれませんが。とはいえ、さすがに上級クラスともなると、その数もぐっと減ります。それでも何名かは確実にいました。
ここまでまとめると、ここ最近の日本語学校に通う中国人留学生は教師(人)とコミュニケーションを取ろうという積極的・活発な学生は減り、一方で問題を解いたり、コツコツと勉強に取り組む学生は全体として増えて来ました。
とにかく初級から上級まで、総じてみな真面目(のように見える)になりました。
デリケートになった。
かつてはいかにも中国人という大陸的なおおらかさを感じさせる学生(授業中にコンビニで買った焼き魚を食したり…)が数多くいましたが、ここ最近は、線の細い、直接的な意見・主張をしない(できない)学生が増えました。
デリケートとは、繊細で傷つきやすいということなのですが、ここでは特に精神的に何らか問題を抱えている学生が増えているということです。自国にいるときから精神科にかかるなどしており、日本留学によって環境を変えることで、それが改善されることを期待したのでしょう。
しかし、現実的にはそうした学生は改善どころか悪化、もしくは事件・事故を起こす一歩手前まで至る学生が少なくありません。教師として、非常に神経を使います。
また、2014年まで続いた一人っ子政策のもと、幼少期はさぞ大事に大事に育てられたのでしょう。叱られるということに慣れておらず、ちょっと注意されただけですぐ親や留学院(エージェント)にクレームをあげたりする学生もいます。
ここで挙げたような学生は増えているとはいえ、全体でみればごく一部です。
2、できる学生、できない学生。勉強する学生、しない学生の差が極端。
この点については、昔も今も変わりません。…が、勉強しない学生は減少傾向です。
勉強する(できる)学生
よく勉強する学生は、それはもうよく勉強します。たとえば平日の午前中は日本語学校、午後は中国人留学生専門の予備校に通います。土日も予備校通いです。そのため日本語学校にも塾にも行かない休みの日はほぼないといった学生もいます。アルバイトも遊びもせず、黙々とスケジュールをこなしていきますが、彼らはお構いなしです。大変だとはあまり思っていないようです。その理由は、母国中国でも同じ様なスケジュールで生活して来たからです。
出来る学生(日本語が流暢、試験で高得点を取る)は、入学してまだ学校の授業が始まっていないにも関わらず、流暢な日本語を話し、日本語能力試験のN1をすでに持っていたりします。それこそ、なんで日本語学校へ来たの?と思ってしまうような。
なぜ、こうした入学前から優秀な学生が日本語学校に入学してくるのかという理由については、渡日前入学許可制度を利用する大学の少なさがあるのですが、こちらは別記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
とにかく、自国の大学を出て日本の大学院を目指しているような優秀な学生は、日本語力はもちろん、その専門分野の知識、高い英語力、そして何よりそれらを支える圧倒的な努力量があります。
勉強しない(できない)学生
一方で、勉強しない学生。それはもう勉強しません。
授業中の居眠りから始まり、学校や家でのゲーム、そしてアルバイトなど。ただそれも10年前との比較で言うとかなり少なくなりました。以前は居眠りなど、起こしては寝、寝ては起こしのいたちごっこ。その理由もアルバイト疲れというものが以前は多かったのですが、今は夜通しでオンラインゲームをするか、クラブで踊るなど。また原因が不明の不眠というのも目立って来ています。
勉強しない学生は、そもそも勉強するという「習慣がない」、できない学生は「基礎学力に何らか問題を抱えている」と感じることが多いです。
そうした学生に日本語教師は何ができるのか。日本語教授以上に難しい問題です。。。
アルバイトに関して、以前は学校へは寝に来るだけみたいな学生も多かったですが、今はアルバイトをしている学生自体が減っています。経済成長と共に留学中もアルバイトをせずに済む程度の経済力を持っている学生が増えているようです。
3、お金持ちの学生は、その程度が半端でない。
これまでに接してきた中国人留学生の経済的豊かさを表す実例
- 銀聯カード使い放題。親から渡されたカードで全てが賄える。
- 自国の親がトレーダー、学生自身も株をやっており学費はその運用益で払う。
またある学生は、2020年のコロナ禍において通学に電車の使うのが怖いと毎日タクシーで通学。
- 都内某所のタワマン最上階に住み、タクシー通学。
- ブランド好き。グッチ、ヴィトンはもちろん、Supreme、Yohji Yamamoto好きなんて学生もいます。
- 日本の大学に合格したら、高級外車をプレゼント。
- 自国の不動産契約(親からのプレゼント)に学生本人がいないと契約できないという理由で帰国。
- 銀座の高級クラブに通う。お金はもちろん親からの援助。←2010年前後。
4、中国人留学生全般のリアル
中国人留学生の住居は?
中国人に限った話ではありませんが、留学生の住居は主に3つ。
- 学校または留学院の用意した寮
- 民間の賃貸マンション・アパート
- 日本にいる親族と同居
寮の場合は、来日前に半年または1年間の契約で入居、その後は民間の賃貸マンションなどに引っ越すのが普通です。またルームメイトと同居(2~3人)している学生も多いです。
都内(新宿)だと路線で言えば、西武新宿線、埼京線、中央総武線沿線沿線が多いです。
その他リアルなあるある。
- 9割7分ぐらいの確立でテレビを持っていません。ネット視聴がメインです。
- 半沢直樹、相棒は中国でも人気です。それから女子学生ならジャニーズ、嵐のおっかけをしている子も以前はよくいました。
- 政治系の話題はタブー。ニュース担当などで政治ネタを扱わざるを得ないときは、十分慎重に。くれぐれも教師個人としての意見は控えましょう。
- 恋愛事情。女子学生はさっぱり、きっぱり。男子学生はぐずぐず、ねっとり。別れたあと引きずるのは、男子学生。万国共通?ただストーカーまがいな事例もあるので、やはり気を付けないといけません。
- 女子学生は強い。キレたら男子学生とか国籍とか関係なく向かっていきます。
- チャットツールは当然、WeChat。授業中も教師の言動をグループ内で話してたりします。怖っ。
中国人留学生のリアル・まとめ
あるあるを挙げだしたらキリがないのですが、さすが人口14億のお国です。個性豊かな学生たちが多く、教壇に立ってもうすぐ14年になろうとしていますが、本当に飽きません。良い事も面倒事もたくさん提供してくれますので。
日本語教師になれば、メディアからは決して伝えられない”素顔”の中国人留学生と交流できます。
いや~ホント楽しい仕事だ。