どうも。のりまき、です。
突然ですが日本語教師のみなさん、授業中に学生からこんなことを言われたことはありませんか。
「先生、つまらないです。」
私が日本語教師としてスタートして1年近く経ったころでしょうか。当時、教えていた中国人学生に授業中言われた言葉です。
今でもはっきり覚えています。中級レベルの聴解の授業。テキストも終わりに近づき、カリキュラムの調整で、テキストではなく自分で考え用意した教材で授業をしなければいけなくなりました。
私が用意したのは、ドキュメタリー番組を録画したビデオ。それを2週続けて見せていたのですが、見せて感想を聞くだけの授業。その2週目の授業で言われたのです。
当時は駆け出しの非常勤講師として働いており、他のアルバイトと掛け持ちしながら日々それこそ泣く勢いでやっていたころです。初の中級クラスとは言え、メインテキストの授業ではなく聴解という単科の授業。新人ということで多少負担の軽い授業を担当させてもらっていたのだと思います。
そこで、甘えたのか。もう手一杯だったのか。手を抜いたのか。分かりませんが、ただビデオを見せるだけの授業になっていたのは確かです。
そのとき、つまらないと言われもちろんショックだったわけですが、その一言があったおかげで、はっきりと目が覚めました。
さて、日本語教師のみなさん。授業中学生は寝てませんか。ゲームに夢中じゃありませんか。日本語の勉強以外の内職してませんか。そもそも、前提として
面白い授業してますか。
はっきり、はい。と言える人、言えない人いろいろだと思います。最初にお伝えしておくと自分が面白い授業をしているかどうかは、ある程度答えられる、あるいは自覚できるものだということです。
もちろん、面と向かって「面白い授業してますか」と聞かれて「はい」と答えられる人はなかなかいないでしょうが。
今回は、面白い授業とは一体どうやったら、できるようになるのかについて解説していきたいと思います。
その1、【定義】面白い授業とは。どんな授業!?
面白い授業と言っても、何をもって面白いとするかは人により判断の異なるところ。
そこで、私のりまき、が独断で定義付けしてみました。私の思う面白い授業です。
ずばり。
「学生のやる気を引き出す授業」です。
ずばり、と言いつつそのまんまで、なんかすみません。
一応、補足します。
やる気とは、学生が授業を受けたい、参加したいと思う気持ちのことです。そして、そのような気持ちを引き出すことができる授業こそが面白い授業だ、ということです。逆に言えば、あの授業は受けたくない、サボってもいいやと思われるような授業がつまらい授業ということです。
これも当たり前のことですよね? でも、とても大事なことなんです。特に日本語学校の場合、授業の良し悪しが、学生の「出席率」という形ではっきりと出てしまいます。もちろん、学生は授業の良し悪しだけで欠席するわけではありません。…ありませんが、学校へ行こうかどうか迷ったときの最後の一押しになることは多いです。
では、どうすれば学生が授業を受けたいと思うようになるのでしょうか。
それには、2つあります。
- とにかく授業が分かる。
- 教師自身に魅力がある。(=キャラクター)
「授業が分かる」… とにもかくにも授業の分かりやすさ。
「教師自身の魅力」… 教師の明るさ、ユーモア、豊富な知識、優しさなどなど。新人の方なら若さ、つまり元気であることも魅力の1つと言えます。
要するに、分かりやすい授業で、尚且つ教師自身になんらか魅力があれば、完璧なわけです。学生のやる気を引き出すに十分でしょう。
それが、私の考える「面白い授業」です。
とはいえ、なかなかそのどちらも兼ね備えているということは難しいです。特に分かりやすい授業をするという点は一朝一夕で身に付くものではありません。時間もかかります。なので、この記事で取り上げる面白い授業というのは、上辺だけの、小手先だけのものではありません。
何というか「本質」といったら過言、、、かもしれません。
もっとも、ネタ的なものもあるにはあるのですが。
その2、【準備】面白い授業をするために必要なこと
では、面白い授業をするためにはどうしたら良いのか。
そのための前提条件は4つ。
- 教師自身が授業を面白い・楽しいと感じられているかどうか。
- 場の空気が読めているか。
- 学生とは基本「です。ます。」で話す。
- 日本語教授の知識は必要十分か。
まず、教師自身が授業を面白い・楽しいと感じられているかどうか。です。
教案書きは大嫌いだけど、授業はとにかく楽しいっ!みたいな感じです。
これ絶対なので。楽しいと感じられない人に、面白い授業はできません。
これはつまり、教師が面白い・楽しいと思いながら授業をしていると、表情も自然と笑顔になっており、それが学生たちにも伝わっていく、広がっていくということですね。
教師の心情、顔に出てますよ。そして、学生は見てますよ。表情を、仕草を。言葉遣いを。
そして、その場の空気を読む力。これも大切です。自分の発言に対し学生がどういう反応を示しているか観察できる力のことです。例えば、無反応、下を向いている、全体にはそれほどでも、ある特定の学生にはウケている(クスっとした小笑い)など。
しかし、これがなかなか難しい。新人ならまだしもベテランと呼ばれる人の中にも、ただ延々と説明をして終わりという人がいます。学生の表情見てください。
3つ目は、学生とは基本「です。ます。」で話すことです。日本語教師も教えている学生が初級の後半にもなってくると、学生と話すのに「です、ます」を使った丁寧体ではなく、「元気?どうだった?」のような、よりフランクな普通体で話すことがあります。
しかし、これはあくまで面談するときのような1対1の場面であって、授業中では丁寧体が基本です。というか絶対です。これは面白い授業という以前にクレーム防止の面もあるからです。
また、普通体では話さない方が良いタイプの人(教師)がいます。友だち感覚で接すれば距離が縮まるということではないことを肝に銘じましょう。
最後に、当然ですが日本語教授の知識は必要十分か、ということ。その日導入する文型や語彙に関することはもちろん、学生のこと、クラスのことも含めて頭に入っていますか。ということです。
その3、【コツ】面白い授業のコツ
それでは、【前提】【準備】を踏まえた上での日本語教師的、面白い授業のコツをお伝えします。
では、まず結論から。日本語教師的、面白い授業のコツはずばりこの3つ。
- キャラ濃い目の学生を味方につける。
- 学生は偏りなく指名し、指名の仕方も工夫する。
- 授業のトピック・テーマ選びが重要。
- 授業は、とにかくテンポが大事。間と抑揚に意識する。
面白い授業のコツはざっくり言うとこの3つ。これから、この3つ項目について補足していきます。
1、キャラ濃い目の学生を味方につける。
面白い授業のコツ1つ目。「キャラ濃い目の学生を味方につける」です。キャラの濃い学生とは、良くも悪くもクラスの中で目立つ学生を言います。言い換えれば、クラスに対して影響力がある学生のことです。
たとえば授業中の発言が多く、良く出来る学生。
日本語は出来ないけど、どこか憎めない天然系な学生。
遅刻常習犯だけど、明るいムードメーカーなどなどです。
こういう学生たちを味方にすることが面白い授業をしていく上ではとても重要です。特に、教師が質問をしたときに、スッと答えてくれる様な良くできる学生は、授業の進行・展開上とても大切です。
教案(授業展開を考える)を作る上で、授業のポイントとなるような場面では、上記の学生をイメージして落としどころを探ることもあります。
日本語は出来ないけれど憎めない学生というのは、それこそ教室の空気を温めてくれる存在です。こういう学生には、正しい答えを求めるというよりは、自由な発言をしてもらえるような聞き方をすると良いでしょう。
2、学生は偏りなく指名し、指名の仕方も工夫する。
面白い授業のコツ2つ目。学生を偏りなく指名する。です。たとえばクラスに20人学生がいたら、その20人に偏りなくです。出来る学生に当ててサッと済ませたい気持ちは分かりますが、ここぐっと我慢です。また、できる学生に多いことですが、誰が何回指名されているのかまで気にしている学生もいるぐらいです。
偏りなく指名するメリットは、以下3つあります。
- 学生一人一人の状態を確認できる。
- 緊張感・参加意識を持たすことができる。
- 公平性が担保される。
そして、さらに余裕があれば指名の仕方も工夫してみましょう。
【実例①】ちょっと変わった指名の仕方・「私を見て」
みなさんはどうやって指名していますか。ただ名簿を見ながら順に、あるいはランダムに指名するだけでは学生も教師も面白くありません。では、どうするか。私が実際にやっている指名方法をご紹介します。これは反応が薄い時や、全体に答えを促してもなかなか、手が挙がらないときなどに効果的な指名方法です。
これでウケなかったことはまずありません。どんなに反応の薄いクラスでも「クスッ」ぐらいは笑いが取れます。頻度としては、1つのクラスにつき4回に1回ぐらいでしょうか。
【状況説明】宿題の答え合わせをする場面
はい、では黒板に答えを書いてくださーい。どうですか?
黒板に答えを書きたい人いませんかー?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
ええ。書きたい人いませんか!?
あっ。そうか。本当は書きたいですけど、手を挙げます。恥ずかしいですね。
分かりました!
では、今から5秒数えますから、考えてください。
そして、黒板に答えを書きたい人、先生の顔を見てください。
良いですか。では、5、4、3、2、1、0ーーー。
まず学生はこの時点で顔を伏せ、わざと教師を見ないようにします。目線を合わさないようにするわけです。
はい、じゃあ黒板に答えを書きたい人、先生を見てください。どうぞ〜
こうすると、学生は答えたくはないけれども、周りの学生が気になるため、少し頭を上げ周りの様子を伺おうとします。そこがチャンスです。頭を上げ少しでも目線が前方を向いた瞬間にすかさず、
はい、王さん!!今、先生、見ましたね!!ではよろしく。1番お願いします!
というような感じで多少、強引さと厚かましさとずるさを混ぜ合わせながら、指名します。これ、もうお分かりだと思いますが、学生で遊んでいるわけです。多少、強引ではありますが、このやり方でウケなかったことはありません。(…こうして文字にすると大分、微妙な感じにはなってしまいますが。)
ぜひ反応が薄かったときなど、お試しください。
全くウケなかった場合でも、自己責任でお願いします。
【実例②】ちょっと変わった指名の仕方・「ノールック指名」
ちょっと変わった指名の仕方。その2は、指名する学生の顔は見ずに当てるということです。
ノールックパスならぬノールック指名。アホくさいかもしれませんが、学生にとったらこれも意外性十分でウケます。特定の学生を当てそうなそぶりをしていた教師から、急に当てらるわけですから。緊張感半端ないです。急に当てられた学生の反応が面白いので、これもぜひ試してみてください。
3、授業の話題・テーマ選びが重要
そして、面白い授業3つ目のコツ。話題・テーマ選びです。テーマとは場面のことですね。場面は通常、導入文型を使うのに一番、ベストな場面はどこかといった感じで考えていくわけですが、そのテーマも学生の興味を引くものとそうでないものがあります。
ちなみに絶対に触れてはいけない話題というのもあります。それがこちら↓
なので、文型導入を担当することになったら、このテーマ(場面)についてはよくよく考えましょう。どんな話題なら興味関心を持ってくれるのか。
下記テーマは鉄板だと言えるものです。
- 教師の私生活関連
- 恋愛関連
- 食べ物関連
- ポップカルチャー関連
やはり、教師の私生活は学生も興味深々。教師の趣味嗜好、家族、ペットなどよく扱いました。ネタとして(笑) でも、これはプライベートのことなので抵抗のある方や扱いたくないという方もいると思います。それはそれで仕方のないことですが、とにかく「学生は知りたい」のです。
また恋愛関連については、言わずもがな話す教師を選びます。
例えば私のように四十をうろついた男性が、「みなさん、デートどこでします?」なんて、ドン引きされておしまいです。
また、だいぶ前の話になってしまいますが、私が担任をしていたどうしようもないダメクラスの話です。日本語はまあ出来ません。授業に集中などしません・できません。遅刻や欠席も多く、頭より体を使うことの方が好きな学生たちでした。
で、どうやったら、授業に集中させられるか、興味を持ってもらえるか日々、苦しんでいたわけです。そんなある日、そのクラスに横並びに入っていた女性のベテラン教師に聞きました。学生からも慕われている、人気の先生です。
トピック(文型導入における場面)は、何で入れてるんですか
と聞くと、その女性教諭は一言。
「う〇こ」
もちろん。そのトピックに至った前後の話はあります。
ただ「う〇こ」というその答えがあまりに衝撃的すぎて、今となっては導入の経緯などすっかり忘れてしまいましたが、ここで伝えたいのは、「うん〇」もクラス×教師によっては、ナイスなテーマになり得るというこです。
4、とにかくテンポが大事。間と抑揚に意識する。
面白い授業のコツ、最後です。とにかくテンポが大事。特に初級は。
授業は、パッパッパッと展開していく、そのためには教師の発話(文型の説明など)もできるだけ簡潔にするよう意識します。これは「ど初級」と呼ばれる0レベルから、中級に入る辺りまでです。中級に入ると逆に教師の発話全体を少しずつ増やしていくといいです。(もちろん長すぎ・多すぎはダメですが。)
話し方としては、間と抑揚に意識するです。抑揚は強弱なので、大事なところとそうでないところで使い分ければ良いですが、とにかく一本調子にならないように気をつけてください。
間については、特に初級後半から中級以上に入って大事になるところです。少し難しいかもしれませんが、学生が答えているとき、答えた後、教師自身が話しているとき、話し終わったときなど、一瞬間を取ってみる。
そして、学生の表情や様子をよく観察してください。
その4、【まとめ】面白い授業のコツ・まとめ
私の考える面白い授業のコツ。ネタ的なものに関しては、ここでは書ききれませんので、いずれまた記事にしていこうと思います。
繰り返しになりますが、学生の「やる気を引き出す授業」それが「面白い授業」だということです。今回は、そのやる気を引き出すコツについて、お伝えして来ました。
難しく考えず、まずは先生自身が授業を楽しむというところから始めましょう。