どうも~。のりまき、です。
秋も深まった11月。進学を控えた留学生はピリピリムード。
なぜなら11月、12月は日本留学試験(EJU)、日本語能力試験(JLPT)と超重要な試験が続くからです。(以下JLPT、EJU)
JLPTは主に大学院や専門学校への進学を目指す学生が、一方のEJUは大学進学を目指す学生が受験する試験となっています。
この2つの試験、JLPTならN2やN1を、EJUなら日本語300点以上の取得を目標に対策授業を行っている方も多いのではないでしょうか。
EJUについて言えば、2022年第2回の試験で国内17,432人、海外4,611人の合計21,953人の留学生が受験します。
と、言うわけで以前こんな記事を書きました。↓
EJUにおける読解問題でいかに点数をUPさせるかについて書いた記事ですが、今回は聴解・聴読解編です。
EJU聴解・聴読解問題における解き方のポイントをお伝えします。
EJU聴解・聴読解とは
EJUは日本の大学など上級学校における学習について来られる日本語力(アカデミックジャパニーズ)を測る試験です。
日本語科目の得点範囲は0~400点。内容は読解(200点)、聴解・聴読解(200点)。
そこに記述(0~50点)が加わる形です。なお記述の得点は別で考えることがほとんどです。
試験時間及び順番はこうです。
最初の記述、読解でヘロヘロにさせたところで、図表を読み解きながらの聴読解、そして最後に一瞬の気の緩みが命取りとなる聴解が始まるというなんとも酷な流れとなっています。
聴読解→聴解は連続して音声が流れます。
ちなみに記述試験は「○○についてあなたの考えを書きなさい」といった形のお題が2つ出され、そのどちらか一つを選んで400字~500字を埋めていくというものです。
EJU聴解の出題形式としては、「男女の会話形式」または「講演(講義)などの独り語り」となっています。字数にすると1題につき設問、本文、選択肢(4択)で合計400字~600字程度。時間的には2分前後です。
等々…なかなかものです。未習語彙がぁ、、、などと言っている場合ではないことはお分かりいただけるのではないでしょうか。
EJU聴解の得点アップに向け日々やるべきこと。
EJU聴解・聴読解の解き方のポイントに入る前に、日々の授業からぜひ指導しておきたいことがあります。それが「聴く練習」と「語彙指導」です。
聴く練習
聴解なんだから当たり前だろうと言われそうですが、ここで言う聴く練習とは「音の聞き分け力をつける練習」のことです。
まず前提として、EJU聴解・聴読解は習ってない言葉が次から次へと出て来ることのが問題なのではなく、知っている言葉なのに聞き取れないことが問題なのです。
まずいのです。もったいないのです。
聴解対策の授業をしていたとき、よく出来る中国の学生が会話形式の聴解問題を間違えてしまったことがあります。聞けば、内容は理解できていたのに、文末表現を聞き違えてしまったそうです。
「えっ?そこ!?」みたいな感じで、かなり意外でした。
他にも接続詞が聞き取れなかったため、間違えてしまったなど。。。など。
なので、まずは基本的な言葉の聞き取る力を日ごろから養うべきです。
そこで、まず聴解力を養いつつEJU対策にもなるおすすめの教材をご紹介します。
EJU聴解対策おすすめ教材その1 聴くトレーニング(聴解・聴読解)基礎編
これはスリーエーから出ているEJU対応の聴解教材です。
対象レベルは初級を終えた学生(EJU対策本ではあるので)からとなっていますが、初級後半から導入しても問題ないです。
パート1は、促音・撥音・拗音・長音の聞き分けから始まり、濁音(清音)、縮約形の練習、そして語彙の聞き取りへと続きます。
パート2では実際の聴解・聴読解問題と同じ様な形式になっているので、本番を意識した練習が可能です。
問題自体は非常にやさしいので、EJU聴解・聴読解対策のスタート(慣れるのに)としては最適です。
また聴くトレーニング(聴解・聴読解)には応用編もあります。
EJU聴解対策おすすめ教材その1 聴くトレーニング(聴解・聴読解)応用編
こちらも基礎編同様の構成ですが、パート1では促音などの練習が単語ではなく、文レベルで出ており、その他に慣用表現や四字熟語を聞き取るなどレベルも良い感じで上がってます。その後は語彙のディクテーションへと続きます。
パート2に出て来る問題も難度が上がり、本番に近い(それでも大分やさしい)形になっています。
なので、この応用編は中級に入り学生が中級の授業に慣れたぐらいから導入しても良いのではないかと思います。テキストには中級後半から上級レベルの学生対象とありますが、上級レベルの学生には少しもの足りないでしょう。
EJU聴解対策おすすめ教材その2 日本留学試験 完全攻略問題集 聴解・聴読解
こちらはいわゆるEJU聴解・聴読解対策に特化した本です。
この完全攻略問題集は、聴解・聴読解を解く上で必要とされるテクニック・ポイントをスキルという形で紹介し、その後演習問題を解いていく構成です。
問題数は聴解・聴読解それぞれ60題ずつ。それがテーマごとに分かれています。1つの括りの中に聴解・聴読解が3題ずつ計6題ありますので、授業で扱うにも適しています。
何より60題という問題数はなかなかありません。
問題がやや易しいのですが、聴解・聴読解のポイント整理には持ってこいの教材と言えます。
レベル的には中上級以上でしょう。
EJU聴解対策おすすめ教材その3 【音声DL付】改訂版 日本留学試験模擬テスト3回分 (文系編&理系編)
そしておすすめ教材の3つ目は、対策授業の総仕上げにふさわしいこの「改訂版 日本留学試験模擬テスト3回分」です。文理に分かれていますが、日本語は文理関係ないのでガシガシ解かせましょう。
語彙指導
EJUに限らず語彙指導が大切なのは、言わずもがな。そのため日本語学校では日々、手を変え品を変え語彙の指導をしているわけです。
もちろん語彙は基本です。しかし一方で限界があるわけです。
いったい誰が、どこの学校が、セイタカアワダチソウを事前指導するでしょうか。
私は以前。もう10年以上前だと思いますが、文法の授業で「クワガタムシ」を語彙として導入したことがあります。もちろんテキストにはどこにも載っていません。
なぜ導入したのか。おそらく文型導入時のトピックか何かで入れたのだと思いますが、今となってはよく覚えていません。
…が。
「すべった」ことだけははっきり覚えています。
反応のとても良いクラスが、その時間だけお通夜になってしまったのですから、忘れたくとも忘れられません。。。
ちなみに2021年までの10年間、EJU聴解・聴読解で「クワガタムシ」が出題されたことは1度もありません。ナミアゲハ(アゲハチョウ)やツチハンミョウは取り上げられているのに、です。
さらに、セイタカアワダチソウに至っては、なんと2度も出て来ています。。。
また余談ですが、出題頻度で言うと「チョウ」「フクロウ」はよく出て来ます。
なので、一度チョウやフクロウの生態について授業で扱っても面白いかもしれません。
…というのは、冗談です。
長くなりましたが、まとめます。
語彙指導は重要ですが、それはEJUに限ったことではないということ。そして、EJU聴解・聴読解に出て来る専門性が高い語彙、あるいは通常の授業では扱わないような語彙は気にする必要はないということです。なぜなら、そういった語彙については必ず本文の中で説明が入るからです。
さらに聴読解であればイラストや図もあり視覚的に判別できます。
知っている言葉なのに聞き取れないこと、これが問題。
まず教師が解いてみること。
EJU対策の授業を行う際は、まず教師が解く。これ基本です。
…なんですが意外とやっていない教師多いです。
授業準備と言えば、スクリプトを見て語彙と答えの確認をして、はい、終わりっ♪
…にしてませんか。
ダメです。
学習者になったつもりで、実際の問題を解いてみましょう。どこでつまずくか、どこが聞き取りにくいか、ポイントとなる表現はないかなど意識しながらぜひやってみてください。
そのうち勘どころも分かって来るはずです。
EJU聴解・聴読解の解き方のポイント
ではここからEJU聴解の解き方のポイントを解説していきます。
その1、メモを取る
下の例で示したものは実際の問題(男女の会話形式)を分かりやすいよう少々手を加えたものです。
聴解問題を実際に解かせていると、韓国学生などはほぼ全員メモを取りますが、中国学生は3分の1~半分程度。
聴解試験でメモは必須。当たり前のことですが、出来ていない学生が多いです。
なので、まずはここから徹底的に指導します。
中にはそもそもメモの取り方が分からないという学生もいますので、そこから指導する必要があります。
まず設問(5W1H)、最低でも設問!
設問の「いつ、どこで、誰が、何を、どうして、どのように~ますか。」これは確実にメモさせます。どこで・する?のように簡潔に。もちろん自国語で構いません。
これを書くだけでもかなり違います。
あとは本文に出て来る日付や数値などの数字や設問にある5W1Hの答えとなりそうな言葉をメモします。
まずは設問をメモするクセをつけさせましょう。
キーワードが分からない学生、結構います。
出来る学生でもワードでなくセンテンスで答えてしまうことがあります。なので、まずキーワードとは何かと言ったところから指導しておいた方が無難です。これは読解にも共通することなので。繰り返し出て来る言葉は?何だった?みたいなところから始めましょう。
その2、問題のパターンごとの違いを確認する。
聴解問題のパターンは「男女の会話」か「独り語り」のいずれかです。
その割合として
男女の会話 15題中4題 27%
独り語り 15題中11題 73%
7割以上が講義などの独り語りです。問題としては会話形式の方が取り組みやすいので、会話形式の問題が出たら、取りこぼさないよう注意させます。
また聴解問題の場合は、最後まで気を抜いてはいけません。
問題を聴いていると「これかな」という瞬間があるのですが、よくよく聴くと最後の最後にどんでん返しされることがよくあります。
れい:…(実行する流れ)…でも、やっぱり止めとこう。 ←最後の最後に。
その3、接続詞、文末表現に注意する。
聴解に限らず読解にも言えることですが、この接続詞というのは最大限注意して聴くべきポイントとも言えます。「つまり、それで」など結論を導くものや「しかし、でも」などの逆接の接続詞。特に逆接の接続詞は要注意。
これら逆接の接続詞が出て来た文中には解答に絡んだ、あるいは解答そのものが出て来ることが多いです。
また接続詞以外にも設問に対応した文末表現も要チェックです。
その4、似たような表現が設問・本文・選択肢に出てきたら要注意。
まず設問では「大切にしているものは」とあり、それが本文では「心がけています」と出て来ます。これが言い換え。つまり「相手の気持ちを考えることを大切にしている」と分かります。また本文に「相手の気持ちを考える」とあり、今度は選択肢の中に「思いやる」と出て来る。
その5、分からない言葉には必ず説明がある。
EJUは大学入学前にどの程度の知識を有しているかを測る試験です。
そのため日本語においても語彙や文法など日本語力そのものというより、既存の知識をどれだけ使って解答できるかがみられています。ある程度専門性の高い言葉・表現が出て来るのは、そのためです。
とはいえ、あくまで測るのは日本語力、専門的な言葉であっても必ず補足的な説明が入ります。ないものは解答に影響しないもの。
なので、学生には分からない言葉や初めて聞いた言葉が出て来ても焦らず、落ち着いて聴くこと、と指導しましょう。
2020年度第2回の聴解では「むせんまい」が出て来ます。
むせんまい→無洗米のことですが、単語を聞いただけでは意味が取れないかもしれません。しかし、ちゃんと会話の中に「無洗米という、洗わなくてもいいお米がありますよ」と説明があります。
「あらわなくてもいい」・「おこめ」=むせんまい。
先ほどのナミアゲハなら~という「チョウ」が…。といった具合。
その6、時間に注意する。
聴解なのに時間?と思われるかもしれまんが、最後の選択肢が流れたあとメモし忘れた、聞き取れなかったなどで解答に迷うことがあります。
こういうケースは分からなかったものとして、マークだけしてさっと次に備える姿勢が大切です。最悪なのは、次の問題が始まっているにも関わらず「う~ん、あ~」言いながら頭を抱えていることです。
分からなかった・迷った場合、問題に固執しない。
これ基本です。
そして、これは特に聴読解問題がそうです。聴読解の場合、表や図など視覚的情報もあるためどうしてもギリギリまで見てしまいがちです。
とにかく分からない問題は考え込まず、さっさと次の問題へ移ること、
その7、聴読解特有のポイント①
先にもお伝えしたように聴読解はいかに早く次の問題に移って問題を見ておけるかがポイントとなります。
そして聴読解はそれが可能です。
どういうことか。
聴読解は、図表(読解)と音声(聴解)が合わさった試験です。なので読解力と聴解力が同時に試されることになるので、聴解問題より負担は増します。
ですが、逆に言うと図表から解答の推測がある程度可能ということです。
以前、聴読解の対策授業をしていた際、学生がこう言っていたのが印象に残っています。
先生簡単です。CDを聞かなくても答えが分かりました。
これは水中ウォーキングにおける筋力のつき方を問う問題だったのですが、
そこに示されたイラストを見ただけで分かったということです。
つまりは、そういう試験です。背景知識がどれだけあるのかも問われる。
まとめると
音声(問題)が流れる前にいかに問題の図表が読み取れるか。
その7、聴読解問題特有のポイント②
ポイント1を踏まえてからのポイントその2
図表の中の仲間外れを探す。聴読解における選択(肢)は図表の中に示されています。
そして、その図表にある仲間外れ、たとえば数値違い、極端な文言などがあればチェック。
または先ほどのように見て分かるといったことも起こりえます。
あとは実際に流れる音声で確認していく。という流れです。もちろんちょっと見ただけは分からない・何とも言えない問題も当然ありますので、その場合は図表から内容を推測するように指導します。
EJU聴解・聴読解のポイント7つまとめ
いかがでしょうか。今回はEJU聴解・聴読解のポイントについてご紹介して来ました。
教える側として思うことは、やはり教師自身がまず問題を解いてみることが大事だということです。
特に過去問。どんな対策本より有効です。
EJUはJLPTと違い毎年過去問が出版されていますので、ぜひ一度やってみて下さい。
日本人が真剣に日本語を解く。
意外と面白いことが分かるはずです。
2022年度 日本留学試験(第1回)試験問題
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